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《 第十七話 撮影会初参加 》


私が撮影会というものに初めて参加したのは高校3年の時でした。        

大阪天王寺にある天王寺公園。                        
その中にある天王寺美術館の裏が“慶沢園”という日本庭園になっています。   
その慶沢園で開催されたポートレート撮影会です。               

どこが主催であったのか憶えていないのですが、私の母校の掲示板にその撮影会の 
募集パンフレットが貼ってあり、友人と(Uではない)行ってみようか、という事 
になり、参加したのでした。                         

慶沢園はとても綺麗な日本庭園です。                     
毎年、菊花展や盆栽展が開かれたり、句会や茶の湯会が開かれたりするところで、 
大阪市内にこんな落ち着いたところがあったのかと感心させられる庭園です。   

撮影会は大盛況でした。                           
今ほど公開された撮影会というものが無かったせいなのか、当時のカメラ自慢、腕 
自慢はこぞって参加していたのではないかと思います。             
かなり広い慶沢園を借り切っての撮影会だったのですが、とても多くの参加者であ 
ふれかえっていました。                           

モデルさんは6名であったと思います(いまいち記憶が定かではない)。     
1人のモデルさんのまわりには数十人が取り囲み、てんでに撮影をしています。  
初参加の私はなかなか中に入る事が出来ません。                
それでも根性でもぐり込み、最前列に出てカメラを構えるのですが、今度はなかな 
かモデルさんの目線をもらう事が出来ないのです。               
慣れている参加者達がどんどん声をかけて目線をもらっているものですから、ただ 
カメラを構えて待っているだけではモデルさんはこちらを向いてくれないのですね。
もちろん声を出さない私が悪いのですが、その情景を見て、なんだかすごく違和感 
を感じましたし、モデルさんは綺麗なのだけれど、なにかマネキンめいて見えたり 
しました。                                 

そのままで終われば私は撮影会に失望していたところだったのでしょうが、なんと、
私はついているというか、ラッキーな偶然に助けられたというか、6人いたモデル 
さんのひとりが、なんと、私の友人のHの姉さんだったのです。         
第十五話で私の創作写真“真珠郎”のモデルとなったHの姉さんです。      
Hの姉さんはプロのモデルであり、そのプロとしての仕事でこの撮影会のモデルと 
して来ていたのです。                            
Hの姉さんは私を見つけると、ほとんど私にかかりきりでカメラの前に立ってくれ 
ました。                                  
弟の友達が百戦錬磨の撮影会マニアに圧倒されて満足に撮影出来ていないから助け 
船を出してくれたのでしょうか。 周囲からブーイングが出るくらい、ほとんど私 
専属のモデルとなってくれたのです。                     

と言って、私は自分の思うがままのポーズをつけれた訳ではありません。     
今まで友人の女の子を撮った事はあってもプロのモデルを撮った事はなかったので、
どういうふうにポーズをつければいいのか、話しながら撮ればいいのか、あるいは 
機械的にポーズを要求していけばいいのか判らず、今にして思えば本当に不慣れな 
撮影であったと思います。 ところが、Hの姉さんはプロであり、そんな私の心情 
を判ってか、つぎつぎにポーズをとってくれ、表情を作ってくれます。      
変な言い方になるかもしれませんが、モデルの力量が高ければ、撮影する側に力量 
が無くてもいい写真は撮らせてくれる、そんな思いがしました。         
そのくらいHの姉さんは私にいい写真を撮らせてくれました。          

そして、私はさらに素晴らしいポートレートを撮る事が出来たのです。      
撮影会が終わり、参加者は解散するのですが、その前にHの姉さんから、終わった 
らお茶飲みに行こうって言われていましたので、慶沢園の入り口で待っていたので 
す。                                    
Hの姉さんの着替えを済ませ、出てきまして、同行の友人と3人でお茶を飲みに行 
きました。                                 
その時はなんでもない話しをしていたのですが、喫茶店を出た頃にはもう日が傾き 
かけていまして、その時、私はもう一度Hの姉さんを撮りたくなり、天王寺公園で 
撮らせて欲しいと言ったのです。 Hの姉さんは快く了解してくれ、3人で再び天 
王寺公園に行き、今度こそ本当のマンツーマン撮影をしたのです。        
しかもプロと。                               
夕陽のかげる公園でま撮影は難しかったのですが、自然光撮影、ストロボ撮影を織 
りまぜて、自分としてはとても気に入った作品を作る事が出来ました。      

以後、プロのモデルを撮影する機会は多くなるのですが、この時の撮影がやはり一 
番印象深いものであり、その後の私を作ってくれたものであると思っています。  




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憂想堂
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