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《 第十九話 ブロニー 》


高校3年の時、友人ふたりがほぼ同時にプロニーサイズのカメラを買った。    
Uがゼンザブロニカ、Iがフジ6×9。                    
UとIは共に現在プロカメラマンとして活躍しており、当時から写真活動には意欲 
的だった。                                 

当然私はそれらのカメラをテスト使用させていただきました。          

まずはフジ6×9。 弁当箱という愛称で呼ばれていただけあり、たしかに四角い 
箱のようなボディでした。 サイズはかなり大きかったのですが、その割には軽く、
後で触る機会のあったペンタックス67よりずって軽かったですね。 これはフジ 
がレンジファインダーカメラであり、ペンタプリズムやミラー、ミラーアップ機構 
などを持たなかった分、ペンタックスよりも軽かったのでしょう。        
シャッターもレンズシャッターであり、シャッター音も軽く、サイズの割にはじつ 
に軽快なカメラであり、使いやすかった。                   

当時、篠山紀信氏がこのカメラを愛用していて、ブラジル、リオのカーニバルをこ 
れで撮っていました。 同時にブラジルで電気カミソリのCMスチールもこのカメ 
ラで撮っていて、その撮影の様子がTVで流され、篠山氏がフジ6×9を持って走 
っている姿が放映されていました。                      

ただ、フィルム巻き上げが、2回巻き上げで、これがよく失敗した。 1回巻き上 
げただけで2回目を忘れてしまうのです。 シャッターがセットされていないのに 
気が付かず、シャッターチャンスを逃してしまった事もありました。       

私は真冬の二色の浜へモデルの女の子と行き、誰もいない、どんよりとした海と空 
を背景にフジ6×9でポートレートを撮りました。               
近くの民家に頼んで、モデルを着替えさせててもらい、裸足のまま浜に出ました。 
白いロングドレスを着て、白いストールを持ってもらってのポージングです。   
真冬の暗い海と白いドレスとの対比を狙ったのです。              
モデルの髪はまっすぐで背中途中まであるロングヘアーで、白いドレスとのマッチ 
ングも良かった。 私の高校の先輩で、すでに卒業し京都の大学に行っていたので 
すが、卒業後もつきあっていた人でした。                   

当然モノクロで撮り、標準現像と増感現像の2種類に撮り分けた。        
現像、プリントをして作品制作の段階で増感のものを選び、ハイキーで、素粒子の 
タッチを出した作品に仕上げました。 どんよりとした海のイメージが素粒子によ 
り強調されたものになり、重さ感が気に入ったからでした。           

そして、次はゼンザブロニカを借り、帝塚山にあったアトリエを借りてのポートレ 
ートです。                                 
ブロニカはハッセルブラッドと同じウエストレベルファインダーのカメラですが、 
ハッセルのレンズシャッターに対し、フォーカルプレーンシャッターを採用してい 
た為、ハッセルよりもかなり重く、しかもミラーが巨大であり、その作動リアクシ 
ョンでものすごくブレの大きいカメラでした。                 
フィルムサイズは6×6で、ハッセルと同じです。               

アトリエの古い木のフローリングの上に、フジの時とはまた違うモデルさんに、今 
度は黒いロングスカートに黒いブラウスを着てもらい、けだるい娼婦の雰囲気を作 
りました。 この時のモデルさんは当時22歳の画家の卵だったのですが、私のイ 
メージをとても理解してくれ、ブラウスの胸元を少し開いて、けだるさを出して欲 
しいと言ったところ、それならブラ無い方がいいね、と言って、ノーブラに直接ブ 
ラウスという着方をし、その上で胸元を開いてくれました。 おかげで、とても私 
の意図に近い雰囲気が出来、その作品はその後もふくめての私のお気に入りとなっ 
たのです。                                 

この時のフィルムはASA32のネオパンFでした。                
最初から原寸大にまで引き延ばすつもりだったので、とにかく微粒子に仕上げたか 
ったのです。 Fはやや軟調傾向もありましたが、ミクロファイン系ではなく、D 
シリーズ系で現像すれば硬調な色合いも出してくれる当時の私のお気に入りのフィ 
ルムだったのです。                             

この時は撮影自体をUに手伝ってもらい、ライティングもかなり綿密にセットして 
撮りましたので、その仕上がりは満足のいくものでした。            

二色の浜の時のものとアトリエでのものは、ともにプロニーサイズの強みを利用し、
ロール印画紙に人物の原寸大に引き延ばした作品にしました。          
片や白いドレスに素粒子、片や黒いドレスに微粒子。              
この2点を個展に出展しました。                       
私の高校時代最高の出来であったと思います。                 
この時の作品はともにモデルさんに上げたのですが、ずっと後年、そのモデルさん 
達に合う機会があり、それぞれがまだその作品パネルを大事の持っていてくれてい 
るとの事で嬉しかったですね。                        

ブロニーサイズはそのサイズゆえに大きく引き延ばすのに有利です。       
特に超微粒子に仕上げたものはとんでもなく高い解像度を残してくれます。    
プロがポスターやカラーコルトンの撮影にブロニーやそれ以上のシノゴやエイトバ 
イテンを使うのは当然の事と言えるでしよう。                 

ただ、カメラ自体のサイズが大きいのと思いのとで、35ミリサイズと比べると振 
り回しが効かない。 SPG撮影会のようにゆったりと撮れるのであればブロニー 
サイズのカメラもいいかもしれませんが、大人数の撮影会や走り回らなければなら 
ない撮影会においてはしんどいでしょうね。                  




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憂想堂
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