3日目。
私とW氏はホテルのレストランで朝食。
だが、かなぶんは朝食を食べない。
これはロケ中ずっとで、かなぶんが朝食を食べているのはついに一度も見なかった。
午前中、まずパレス.オブ.ファインアーツへ。
ここはギリシャ神殿風建物の美術館である。
その建物を含めた環境をバックに撮り始めた。
庭園を歩き、エンタシスの円柱やずっと続く石造りの壁面ぞいを歩きながら撮影した。
ロケーション的にはとても良かったのだけれど、この時はさすがにそろそろ疲れの出
始めていた時期なので、どうも乗りが悪かった。
結構フィルムは使ったのだけれど、私はここでのカットはあまり気に入っていないた
め、写真集でもほんの数カットしか使っていない。
その近くで昼食を摂ったのであるが、かなぶんはアメリカではポピュラーな菓子パン
のチェーン店があり、そこで食べたい、と言い出す。
かなぶんはこと食事に関しては、高級な店で食べたいとか、有名なレストランで食べ
たいとか、ワインがなければだめとか、フルコースでなければだめとかいう事が全く
無い。 食事に関しては無頓着と言ってもいいかもしれない。
夕食でも有名なレストランに行くよりピザがいいという事もあった。
で、この日の昼食は、その菓子パンのチェーン店があったため、かなぶんはそのチェ
ーン店を知っていたため、そこが目に入り「あそこで」という事になったのである。
が、しかし、私と体重100キロ以上あるアメリカ人のW氏にとって昼食を菓子パン
で済ませろというのは酷である。
その後の打ち合わせを食事しながらと思っていたのでしぶしぶつき合ったのであるが、
この時は辛かった。
昼食後、私がかなぶんと離れているところへCさんがやって来て「文子ちゃんね、自
分でこう撮って欲しいっていうイメージ持ってるみたいですよ」と言った。
やはり私の撮りたいイメージとかなぶんの撮られたいイメージにはギャップがあった
のである。
といって今からイメージを変更する訳にはいかないし、それに、かなぶんの持ってい
るイメージというのはこれまでメディアが引っ張ってきたイメージそのものであるか
もしれない。
もしそうであるなら私はこの時点ではそれをくつがえしたいと思っていた訳であるか
ら受け入れる事は出来ないのである。
またしても私は思い悩んだが、大人の女であるかなぶんを撮ろうと思った自己のイメ
ージを貫いていこうと再度自己確認した。
午後から、シスコ市内から車で1時間ほどのところにあるヌーディストビーチに行っ
た。
一般海水客のいるパプリックビーチから離れたところにあり、崖で隔離された小さな
ビーチだ。
私達が行くとすでにヌーディスト達が50〜60人ほどもいて、それぞれオールヌードで
日光浴したりフリスビーで遊んでいたり海水浴を楽しんでいたりした。
ビーチに着き、さっそく私達も裸になった。
撮影されるかなぶんだけではなく、私もCさんもW氏も裸になって撮影に入ったので
ある。 かなぶんはモデルだから私としては裸であってもあまり気にはならないので
あるが、モデルではない素人の女性であるCさんが裸でいるのにはちょっと目のやり
場に困った。
ヌーディスト達はみんな気のいい人達ばかりであった。
私達を日本から来たヌーディストという事で、気軽に声をかけてくれたり手を振って
くれたりしてなかなかいい雰囲気でしたね。
このビーチではかなぶんの元気な姿が撮りたかった。
かなぶんは応えてくれ、ビーチを走り回ったり、岩場に登ったりしてくれて、おかげ
で動きのある楽しい絵が撮れた。
かなぶんは運動神経はいいらしい。
走るのも速いし、岩場でも危なげがない。
ひょいひょいと登っていき、降りる時は岩の上からぴょんと飛び降りる。
こういうところはまだ女の子なんかなと思ったりもした。
この時ちょいとした事件が起こる。
いるのですねアメリカにも。
ヌーディストを盗撮しているやつがいたのです。
私達は他のヌーディストの邪魔にならないようにビーチの端の方で撮影していたので
すが、いきなりビーチ中央の方から声がしまして、見てみますと、ひとりの男がこち
らに向かって走って来る。 それを数人が追いかけて来るのです。
どうもただならぬ状況であるのが感じ取れました。
ちょうど私とかなぶんがビーチの出口近くにたいものだったので、私達の方に向かっ
て男が走って来るのです。
私は瞬時に事態を理解しまし、走ってきた男を私が捕まえたのです。
男は多少抵抗しましたが、アメリカ人とはいえやさ男であったのとわたしは柔道三段
であったのとで力の差があり、なんなく捕まえる事が出来たのです。
追いついてきたヌーディスト達はただちにその男の隠し持っていたカメラを取り上げ
その中のフィルムを抜き取りました。
よくよく聞いてみますと、その男は岩陰に隠れてヌーディストの女性達の写真を撮っ
ていたのだという事。
その男はさんざん小言をくらって解放されました。
そんな事もありましたが、私達はそのビーチでの撮影を終え、次ぎの場所に移動です。
また市内方向にもどり、ゴールデンゲートブリッシを挟んでシスコの対岸にあるサウ
サリートのミルバレーというところに行きました。
ここは要塞跡地のあるところで、高台からブリッジとシスコ市内がとてもよく展望出
来るところなのですね。
ここでまたハプニング。
要塞跡地がなかなか造形的に面白かったので、そこで撮ろうとして近づいたところ、
いきなりかなぶんが「キャッ」という悲鳴と共にだーーーーっと走って逃げ出した。
なんやっ? と思い、追いかけて聞いてみますと、かなぶん「霊がいた」と言うので
す。 見るとかなぶんの身体中に鳥肌が立っていました。
かなぶんは霊感が強いと言うのですね。
だから霊をよく見るのだと言う。
この時も要塞跡地に霊達がいるのが見えたのだと言うのです。
それで残念ではあったのですが、その場での撮影を断念。
けど、高台では風が吹いていて気持ちが良く、かなぶんも崖っぷちに立ち、タイタニ
ックのポーズなどをしまして、私もそれをカメラに収めたりしていました。
その日のディナーはW氏のお薦めのレストラン。
予約無しで行ったので少し待たされましたが、その間カウンターでアベリティフをい
ただく。 このカウンターも1席しか空いていなくて立っていたらアメリカ人の老夫
婦のご主人が自分は席を立って、かなぶんとCさんに席を譲って下さいました。
レディファーストの国なのですね。
ここで食べた生牡蠣はおいしかった。
私とW氏とCさんはワインを飲んだのですが、かなぶんはペリエです。
かなぶんはお酒を飲まない。
飲めないというのではないのですが、あまり好きではないという事でした。
この日こそはゆっくり寝ようと思っていたのだけれど、まだまだ時差ボケは続いてい
く。
以下次号。
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