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《 第三十二話 かなぶん撮影秘話5 》


午前中はフォートポイントへ行ってゴールデンゲートブリッジの見える風景を取り込 
む。                                     
この日の午前中は霧が出て寒く、さすが霧のサンフランシスコであると感心したもの 
ですが、かなぶんは寒さに弱い。 ちょっと停滞気味であった。          
かなぶんの時差ぼけ披露はこの日がピークであったようで「ふっと気を抜いたら崩れ 
落ちそう」と言っていた。                           
今にして思えば、私もこのフォートポイントにいた時が一番しんどかった。     
結局ここでの撮影は早々に切り上げ、昼食へ。                  

午後からは室内でのヌード撮影用にと借りたホテル.マークホプキンスへ。     
このマークホプキンスはサンフランシスコで6軒しかない5つ星のホテルのひとつで 
ありまして、じつに豪華なそして重厚な建物のホテルでした。           
内装も大理石をベースにした造作で、レリーフなども美術館並みの装幀で、これはす 
ごいロケーションとなりました。                        

私はここでの撮影では、かなぶんに「笑わないで欲しい」と注文をつけました。   
広いレセプションルームを撮影に使わせてもらえる事になり、そこにシースルーのド 
レスを来たかなぶんに立ってもらいます。                    
ここで私はかなぶんの「大人の女」の部分をメインテーマにして撮影しようとしたの 
です。                                    
思った通り、かなぶんは大人っぽいシースルーのロングドレスがとても似合いました。
笑わずにちょっと憂いをたたえた表情も良かったし、全体イメージやシルエットも良 
かった。                                   
「可愛い女の子」のイメージで撮っていれば、こんな雰囲気の作品は作れなかっただ 
ろう。                                    

さすがは5つ星ホテルでありまして、私達が撮影している時には、撮影の邪魔になっ 
てはいけないという事で、夕方からのレセプション用に置いてあったワゴンや装飾用 
機材などをスタッフを集めて片づけてくれ、綺麗なロケーションで撮影出来るように 
協力してくれた。                               
おかげで最初にロケハンした時よりずっと広い空間での撮影が出来て良かったです。 

レセプションルームでの撮影を終えて部屋に戻り、室内でのヌード撮影です。    
スゥイートを借りての撮影でした。                       
このロケでかかった経費としてはここでのものが一番高くつきましたね。      
でも、その価値は充分にあったと思います。                   
マークホプキンスのスゥイートは広いリビング、広い空間と豪華な調度であり、これ 
また狙っていた大人のイメージを引き出すにはとても良かったのです。       

ここでのヌード撮影は3時間を予定していたので「45分撮って15分休憩の3ラウ 
ンドでいこう」と言ったら、かなぶんは「休憩無しで続けて撮ってほしい」と言うの 
です。                                    
疲れていたため、へたに休憩を取るとだれてしまうと判断したのですね。      
私としては休憩は入れたかったのですが、かなぶんのリクエストに応えて3時間ぶっ 
通しの撮影となりました。                           
F4にストロボをセットした状態では3キロを越える重量がある。         
それを3時間持ち撮影を続けるのは大変な事なのである。             
私は汗だくになり、後半には腕がぱんぱんとなり、息切れまでしてきた。      
エントランス、リビンクA、B、カウンターバー、ベッドルーム、パウダールーム、 
バスルームと撮影ポイントが豊富で、いつものように走り回りながらの撮影である。 
かなぶんもそれに合わせて走り回ってくれる。                  
笑わない、という事は今までとまったく違ったイメージを作ってくれる。      
現場に緊張感も出てくるし、今まで見た事もないかなぶんの表情がどんどん出てくる。
演技ではない21歳のかなぶんをとらえる事が出来たのではないか。        
今までにない作品を撮る事が出来たのではないか。                

3時間の撮影が終了したとたん、私はソファーに崩れ落ち、かなぶんもベッドに倒れ 
ていた。                                   
ほんまにこの時はしんどかったのですが、後々作品を見てみますと、そんなしんどか 
った様子が微塵も出ていない。                         
さすが、かなぶんはプロなのであった。                     

私達はそのまま夕食時までなーーーんにもしなかった。              
ただスゥイートでそれぞれにへたっていた。                   

夕食もホテルの近くのレストランへ。                      
私もかなぶんも簡単でいいと言っていたのですが、W氏が「疲れている時ほどちゃん 
としっかり食べなければだめだ」と言ってスペアリブ料理が有名な店へ我々を引っ張 
って行った。                                 
適当にグリルを注文したら、スペアリブ5本くらいとチキンの脚1本、それにフライ 
ドポテトがてんこ盛りっというのが出てきて、見ただけでげっぷが出てきそうだった。
食べなければ、と努力したのですが、半分も食べる事が出来なかったですね。    
かなぶんはスープだけでいいと言っていたのですが、これもW氏がスープ以外にフィ 
レステーキを注文してくれてかなぶんに薦めていた。               
とにかくこの日がロケを通しての疲労のピークであり、これ以上続けるのは無理では 
ないかとさえ思いましたね。                          
けど、この時に無理してでも食べたのが効いたのか、翌日からは私もかなぶんも元気 
が戻り、復活していくのである。                        

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憂想堂
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