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《 第三十六話 秀 蘭 1 》


遊ぼう創ろう楽しもうという事で、カメラの話ばかりではなく、遊びの話でも書こう
と思います。                                
で、何がいいかなと思ったのですが、私自身楽しくて好きなのは旅でありまして、そ
れならという事で旅の話でもひとつ。                     

旅と一言で言っても国内もあれば海外もあります。               
海外でもアジアがあれば欧米もあります。                   
私は仕事柄海外への出張が多く、今までに11カ国、30回の海外旅行をしました。
ほとんどが仕事であり、観光気分ではなかったのですが、やはりそれなりの時間を作
ってその国の生活感を見て歩いたりするのですね。               
そんな話を少しずつしていこうかなと思います。                

という事で、まずは海外から。                        
そして近いところで台北の話などをしましょうか。               

私が台北を訪ねたのは3度ありますが、初めて行ったのはもう10年ほど前。   
中国で言う旧正月前でしたから確か2月でしたね。               
空港から台北市内に向かうバスの中から見る風景は日本とよく似ていましたが市内に
入ると景観が一変します。                          
建物も市内風景もゴチャゴチャとした感じでやたら人が多く、街中のどこを見ても雑
踏というか喧噪とした感じに思えた。 そして街全体がなんか老朽化した色合いに見
えましたね。 もちろんビルも建ち、都会ではあるのですが、近代的な色合いを感じ
なかったし、例えばヨーロッパの市街のような古いけど伝統的な景観や重厚感も感じ
なかった。 近代的な市街がそのまま古くさくなったような印象だったのですね。 

宿泊ホテルは豪華なところでした。                      
確か環亜大飯店というホテルで、これでもかっというくらいに成金趣味的な、やたら
金を使った装飾の多い内外装で、いかにも陳腐な政治家が好みそうなホテルだった。
部屋も豪華で広く、シングルであるのにベッドはダブルで備品もふたり分用意されて
いた。 これは後から女性を連れ込めるようにという配慮なのだそうで、当時はまだ
日本人が台北に旅行に来ると言えば女性目的であると思われていたからなのでしょう
ね。                                    

部屋に入るとすぐにメイドさんがお茶を持って来る。              
このお茶は中国茶でおいしかった。                      

ホテルに着いた時点ですでに夕刻だったのですが、夕食までに少し時間があったので
私ひとりでホテルの近隣を歩いてみた。                    
まず目に付いたのは(日本では見ない光景なので目についたというべきでしょう)車
椅子に乗った身障者があちこちがガムを売っている姿。             
観光客と見ると声をかけてきてガムを買ってくれと言う。            
たぶん、働けない身障者に収入をもたらそうという団体がガム売りで彼らに収入を与
えようとしているのではないかと思いましたが、それにしてもたくさんいたので驚き
ました。                                  

ホテルのある場所は結構メインストリートであったのに道路や街角が汚い。    
やたらゴミが落ちているし汚れている。                    
清掃事業が無いのかこれがあたりまえになっているのか、とにかく汚い。     
(これは10年後に訪ねた時には一変していた。 とても綺麗になっていた)    
そのうえ人が多いからやたら雑踏感がある。                  
けど、それ故になんかパイタリティのある街やなあという印象でしたね。     

てな事を感じながらホテルに戻り、食事です。                 
これがまたやたら豪華な中華料理で、見た事も無い食材がズラリと並び楽しかったで
すね。                                   
この旅行は建築業界の研修旅行で、建材関係の企業のご招待であり、バブル時期であ
ったりでやたら豪華なものでした。                      

夕食後、私は台北名物の夜市に行きたかったのですが、一緒に行った招待企業の社長
に誘われ、ナイトクラブへ。                         
これがまた一流のクラブという事で、豪華絢爛でありまして、そこにいる女性もとび
きり綺麗な女の子ばかりでした。                       
で、そこでクラブのマネージャーが来まして、気に入った女性がいれば指名して下さ
い。 その女性を今夜あなたの部屋に行かせます。 と言うのです。       
つまりクラブにお金を渡せば、そこに居る女性と一晩共に過ごせるのですね。   
だからホテルの部屋がダブルになっている。                  
しかし値段を聞いて驚きました。                       
日本円で12万円という事でありまして、当時の私としてはとても一晩の価値観とし
ては考えられなかったので丁重にお断りし、同伴はしませんでした。       

で、少し寂しい気もしましたが、ホテルに戻り、ひとり部屋にいますと、ドアがノッ
クされ、ボーイが入ってきました。                      
聞くと「私の妹が日本に興味を持っている、日本の話をしてやってほしい」と言うの
です。                                   
これは、ひとりで部屋にいる日本人を相手にした女性斡旋であると思い、最初は相手
にしなかったのですが、やたら熱心に言うものだかし、ひとりでいるより話相手がい
るのもいいなと思いOKしたのです。                     
そしたらしばらくしてひとりの女性が来ました。                
驚いた事にとても若い女の子で、しかも、日本語がとてもうまい。        
日本に興味を持っているのは本当なんやなと思いました。            
あまりに日本語がうまかったので、私は一計を案じました。           
台北では日本語も英語も通じない。                      
私は観光地よりもその国の生活感のあるところをいろいろと見たいと思っていたので
余計に日本語の通じない地域に行こうとしていた訳で、そんな時に通訳がいれば行き
やすいのでは、と考えたのです。 この子なら充分に通訳が出来る。       
そこで私は交渉しました。                          
昼にいろんな所へ行きたい、通訳として雇いたい、と。             
その子は快くOKしてくれました。                      
しかも安い料金で。                             
そして、私は次の日から通訳付きの台北観光をする事になるのです。       
その子の名前は「秀蘭」と言いました。                    

以下次号。                                 

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