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《 第四十話 二天一流 》


さて、つぎは宮本武蔵が開眼したという二天一流です。
これは大小の剣を両手に一本ずつ持ち、片手で防御、片手で攻撃という、じつに理に
かなった剣技でありますね。
ところが、武蔵以降を見ますれば、この二天一流を受け継いで名を挙げた剣豪は出て
いません。
これほどに合理的な剣技が何故その後の剣術の主流と成り得なかったのか?
それは、まず、腕力の問題であると私は想像します。
宮本武蔵はそもそも“たけぞう”と呼ばれていた少年の頃から身体が大きく、膂力が
卓越していたと言います。
十歳の頃には大人を目の上にまで掲げ挙げる事が出来るほどの怪力の持ち主であった
という事なのですね。
それほどの怪力があればこそ、片手で持った剣でも、両手で持つ一刀流と同等かそれ
以上の斬力を有していたのだと思います。
ですから、武蔵ほどの腕力を持たない普通の剣士が二刀流を使ったところで、一刀流
の斬力にはかなわなかった。
故に、武蔵以外の凡百の剣士では二天一流を自己の流派とする事が出来なかったので
はないかと想像する訳です。

さて、今回これをカメラに置き換えてみますと。
右手と左手の両方に同時にカメラを持って撮影するという訳にはいきません。
何故かと言いますと、左手用(通常のカメラと機能がシンメトリーに反対にレイアウ
トされているもの)のカメラが無いからです。
かつては京セラから“サムライ”(今回の話題と共通したネーミングですな)というハ
ーフサイズカメラが発売されていまして、これには左手用がありましたが、これ以外
で私は知らない。
とすれば、カメラにおける二天一流とはどういう事か。
これは、SPG撮影会において、miyaさんがよくやっている、両肩に1台ずつのカメ
ラを吊し、撮影場面に応じて瞬時にカメラを持ち帰る、というスタイルではないかと
思います。
どうしてこんな事をするのかというと、miyaさんの場合は銀塩とデジタルの交互使用
という事にあるようですが、これ以外にも、ズームレンズを使わずに単焦点レンズの
使い分けやフィルムの使い分けという事が考えられます。
しかし、これもやってみるとなかなか難しい。
その場その場でどちらのカメラを使うかという瞬時の判断や、持ち替えの時にシャ
ッターチャンスを逃してしまうという危険性があります。
ゆえに、この流派はかなりカメラの扱いに慣れ、写真そのものに慣れた上級者でなけ
れば完璧に使いこなすのは難しいのではないか。

と、考えると、剣とカメラの道には共通点が多いようですが、それぞれに難しい問題
や修練の必要があり、道を究めるのは難しいものですね。
しかし、難しいからこそ挑戦のしがいがあり、奥義に達した時の喜びもひとしおなの
ですね。

みなさん、修行に励みましょう。


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憂想堂
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