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《 第四十八話 好きなものを撮る 》


写真がうまくなりたい、上達したいと思うならば、自分の好きなものを撮りましょ
う。
へんに格好をつけて撮りたくもないものを気取って撮っていても、それが上達の早
道であるとは思えないのですね。
好きなものを撮っていてこそ、その好きな被写体をより美しく、よりうまく撮ろう
とする努力が芽生える。
これは私の個人的な思いなのですが、世の中の男性カメラマンが撮りたいと思う被
写体の筆頭は圧倒的に“女性”なのではあるまいか。
もし目の前に“私の写真を撮って”と言う女性がいれば、それを断る男性カメラマ
ンはほとんどいないのではないか。
女性を撮っていないカメラマンは、撮るべき女性との遭遇がなかったからではない
のか、と思います。
では、その遭遇がなければ“好きなもの”を撮る事が出来ず、上達は難しいのか、
というとそんな事はありません。
遭遇がなければ、そのための努力をすれば良いのです。
カメラメーカーやフィルムメーカー、あるいはカメラ雑誌が主宰する撮影会に積極
的に参加する、といった行動がその第一歩かもしれません。
が、こういった撮影会においてモデルさんと意志の疎通を持つのは難しい。
撮影会のモデルさんを女性として、そのキャラクターを掴んで活き活きと撮るとい
うのは難しいのです。
なぜならば、ほんとどの撮影会はモデルさんひとりに対しカメラマンが30人から40
人、あるいはもっと多くのカメラマンが取り囲み、目線をもらうだけでも精一杯と
なるからで、そんな場面で個人的なコミュニケーションがとれるとは思えないので
す。
では、そこから一歩踏み込んで、次なる手は、知り合いの女性に頼む、近所の娘さ
んに頼む、同僚の女性に頼む、といった行動をどんどんとっていく。
この手は、被写体がアマチュアであるため、プロのモデルさんのようにうまくポー
ズをとってもらったり表情を作ってもらったりする事は難しいのですが、その代わ
り、うまく雰囲気を作る事が出来れば、自然な笑顔や動き、スナップの面白さを撮
らせてくれる事でしょう。
そう、そこに上達の第一歩があるのです。
アマチュアモデルであるという事は、カメラマンから積極的にポーズや表情、雰囲
気の説明をしないと撮影意図を分かってもらえない、そこにカメラマンとしての腕
の良さ悪さがはっきりと出る。
であるから、カメラマンはより一層自身の話術や腕を上げて撮影に挑まなければ
ならないのである。
そして、それらがうまく出来るように努力する。
その努力が上達へと導いてくれる。
さらに、女性の場合、自分を撮ってもらったら、その作品を見たがる。
そして、うまく撮ってもらえれば喜んでくれる。
カメラマンも喜んでもらえれば嬉しい。
すると、さらにうまく撮ろうとする。
その相乗効果が上達へと導いてくれるのである。

これはやはり、好きなものを撮る、というところからのスタートではないでしょうか。
そのスタートは、自分は何が好きなのかをはっきりと自覚するところからなのかも
しれませんね。


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憂想堂
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